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角川武蔵野ミュージアム

時代を映したパリジェンヌ

角川武蔵野ミュージアム
「LA VIE PARISIENNE(ラ・ヴィ・パリジェンヌ)」表紙
ゲアダ・ヴィーイナ 縦33.8×横25.7センチ
角川武蔵野ミュージアム 角川武蔵野ミュージアム

 

 2000年ごろからセクシーな表現を含む「女性らしさ」を表現するアートスタイルが再評価されています。当館ではその様式で描かれた作品を「ガーリー・アート」と定義。本企画展監修の博物学者である荒俣宏氏(77)が約30年前にパリの古書店に通いつめていた際に出会った作品を中心に展示しています。

 その起源は、19世紀後半から20世紀初頭のパリにさかのぼります。女性の解放や自立が進んだパリの社会情勢を背景に、ビジュアル雑誌で一般女性の生活スタイルやファッションが紹介される文化が誕生。コルセットを着けた貴族的な女性から、次第にダンスホールで踊る姿や女性の生活風景が描かれるようになりました。

 ゲアダ・ヴィーイナ(1886~1940)の作品は柔らかで動きがある表現が特徴。可愛いので見逃しがちですが、天使は「愛=エロス」を意味し、自由を奪われた第1次世界大戦の風刺になっています。狩人のように見える女性は「矢」を持つことで、エロスの教育に携わったビーナスを示しています。

 最初期にパリで活躍したラファエル・キルヒナー(1875~1917)は彼のアイコンである黒いシルクストッキングをはいた女性の脚を数多く残しています。それまで娼婦のシンボルと見なされていた黒いストッキングを、キルヒナーは上品で、無邪気かつ大胆に表現。古い道徳観からの脱却を描いていました。

 ガーリー・アートは単なるセクシーな表現にとどまらず、時代の変化や女性の社会的地位の向上を反映した重要なアートスタイルであると言えるのではないでしょうか。

(聞き手・片野美羽)

 


 《角川武蔵野ミュージアム》 埼玉県所沢市東所沢和田3の31の3(☎0570・017・396)。午前10時~午後6時(入館は30分前まで)。2点は企画展「20世紀の美少女誕生 『ガーリー・アート』~少女漫画はこの子たちから~」にて9月30日まで展示。1400円。原則火曜休み。

▶角川武蔵野ミュージアム公式サイト https://kadcul.com/

 

おかざき・えみ

 学芸員・大竹真由さん

 おおたけ・まゆ 京都府出身。専門は西洋美術、日本近代美術。2019年から角川文化振興財団に勤務し、展覧会企画を担当。