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日本玩具博物館

ままごと道具 食文化色濃く

イタリアのミニチュアキッチン 24.5×64.8×24.3センチ
イタリアのミニチュアキッチン 24.5×64.8×24.3センチ
イタリアのミニチュアキッチン 24.5×64.8×24.3センチ 昭和20~30年代ごろのままごと道具セット 14.8×18.7×1.8センチ
 当館は開館50周年を迎え、世界と日本の玩具や資料約9万点を収蔵しています。1979年の国際児童年をきっかけに、世界の玩具の収集を始めました。
  ままごと道具は国内外で2500組ほどあると思います。子どもの手のサイズに合わせ子どもが使って遊ぶもの、人形の手のサイズに合わせ人形と遊ぶもの、お土産用として産地で作られる小さなコーヒーカップのようなものに分けられます。郷土玩具の一つとして集め始め、近代になるとブリキ製やプラスチック製などが出てきて、玩具史を描くために収集ラインを広げました。
 
 地域ごとに展示しています。ドールハウスが発達した欧州では実際の道具が均一に縮小されたミニチュアと、郷土玩具のような素朴なものが混在しています。アジアでは竹細工やヤシの葉など自然素材を使った郷土色豊かなものが見られます。中近東は喫茶文化が発展しており金属製のティーセットが作られています。南米ではテラコッタ(素焼きの器など)のような素朴なものと移民が持ち込んだ装飾性豊かなものが見られます。
 
 日本は二つのグループで紹介しています。一つはハレの日のままごと道具です。京阪神において昭和の中頃まで、ひな飾りの黒漆塗りの道具に加え、白木の勝手道具やかまどなどが段飾りの下段に置かれていました。当時の台所がそのままの姿で小さく作られていました。日常のままごと道具は明治、大正、昭和と並べています。ちゃぶ台からテーブルに、かまどからガスレンジ、システムキッチンへの移り変わりがままごと道具を通して見えます。
 
 世界中に普遍的に存在していることで、ままごと道具という食べ物をつくることに特化した玩具が、人にとって、子どもにとって大事だと分かります。当館の展示を細かく見ると、国による違い、時代による移り変わりが分かり、自分の立ち位置が見えてきます。子どもたちにどのようなものを残すかという問いかけにもなっています。
 
 (聞き手・鈴木芳美)

 《日本玩具博物館》 兵庫県姫路市香寺町中仁野671の3(☎079・232・4388)。午前10時~午後5時。「世界のままごと道具~小さな世界のキッチン探訪~」と「日本のままごと道具~明治・大正・昭和~」は10月20日まで開催。600円。原則水曜日、年末年始休み。。 

あさくら・ゆみ
学芸員 尾崎織女さん
 
 おさき・あやめ 1962年生まれ。神戸大学教育学部卒業。90年から現職。節句にまつわる子ども文化を研究。著書に「世界の民芸玩具」「ままごと」など。

日本玩具博物館 公式ホームページ

https://japan-toy-museum.org/

(2024年9月10日、朝日新聞夕刊欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)