フランスの幻想絵画画家として活躍しているジェラール・ディマシオ。彼が制作した縦9×横27㍍の巨大な作品が当館の目玉です。1人の作家がキャンバスに描いた油絵としては世界最大で、ギネス世界記録にも内定しています。
ディマシオは1938年アルジェリア生まれ。一度教職につくも、70年代後半以降は絵画に専念しています。作品には共通した世界観があり、彼が1万年後の未来を2万年先から振り返るようなイメージだといいます。タイトルがないのも大きな特徴です。
小学校を改装した美術館では、私が収集した200点以上の作品を常設で約100点展示しています。彼との出会いは約40年前。仕事の息抜きに訪れたパリのギャラリーで、当時画家としてデビューしたての彼の絵にひかれ、購入したことからお付き合いが始まりました。
30年前、彼に「自身の集大成となる作品を作ってくれ」と頼みました。しかしそこから3年間音信不通に。やっと連絡が来て見にいくと、この大きな絵が完成していたんです。
生と死や愛と憎しみといったアンチテーゼがちりばめられています。中央上のブラックホールや左右端の顔、体は半分しか描かれていません。展示の条件は鏡を置くこと。初めから効果を計算して制作したのでしょう。
鏡は絵を囲むように置いてあります。窓から差し込む自然光は、天気や時間によって作品の表情を変化させます。鏡面や光の入りなど全てを含めて一つの作品とし、永遠に続く無限の世界を表現しています。
「WHEN THE SEA KISSED THE SKY」は、ディマシオの娘をモデルに描かれた作品です。娘が彼の作品を見て感じたことを書き表した詩の題名が、そのままタイトルとなっています。2000年以前の作品は色数が抑えられていましたが、年齢を経て私生活も変化したことで、作風も明るく、カラフルな色づかいになってきました。
(聞き手・中山幸穂)
《太陽の森 ディマシオ美術館》 北海道新冠町太陽204の5(☎0146・45・3312)。午前10時~午後4時半。1700円。(月)(火)(水)((祝)を除く)休み。12月16日(月)以降冬季休館。
◆太陽の森 ディマシオ美術館:https://dimaccio-museum.jp/
館長 谷本勲さん たにもと・いさお 1940年生まれ大阪出身。83年から株式会社ミタカ会長。2010年から美術館理事長も兼務。 |