フランスのヌベールにある老舗の洋菓子店「ネギュス」には、チョコレートのキャラメルをキャンディーで包んだお菓子が売られています。パッケージは緑色の丸い缶に、金色で文字や絵柄が描かれていて、とてもクラシック。つやっとした美しいお菓子にふさわしい、高級感のあるデザインが素晴らしいですね。
1902年に発売され、100年以上経った今でもデザインはほとんど変わっていません。フランスでは、古くから愛されてきたものを大切に残していく文化があります。このネギュスの缶からは、お国柄を感じ取ることができます。
チョコキャンディーのレシピは門外不出で、たった一人の職人さんが手間暇かけて手作りしているそうです。変わらぬパッケージからは、「この味を守り続けたい」という強い意思も感じられます。
ドバイにある「ミルザム」はスパイスを使用した進化形のチョコが人気です。「モダンアラビック」がコンセプト。パッケージはアラビアの砂漠やタイルをイメージしたようなデザインなど、どれも美しいです。味によって変わる色とりどりのパッケージは、アラビアの風景を感じさせますね。
古くからの味を大切にする、伝統の象徴のようなネギュスと、新たな味を目指し、まさにこれからというブランド、ミルザム。この対比も面白いですよね。
1868年の開港を機に西洋文化が入ってきた神戸では、いち早くチョコなどの洋菓子文化が根付きました。この地に本社を置き、当館を運営する「フェリシモ」は、約28年前から世界のチョコレートの通販を手がけています。扱うチョコレートのパッケージの美しさと多様性を知り、「これはアートで文化だ」と気付いたことが開館の原点です。所蔵数は寄託品も含め約2万5千点。多くがショコラティエやお客さま、従業員からで、みんなでつくる博物館になっています。
(聞き手・斉藤梨佳)
《フェリシモ チョコレート ミュージアム》 神戸市中央区新港町7の1の2階(☎078・325・5767)。【前】11時~【後】6時(入館は30分前まで)。展示替え期間休み。千円。
統括マネージャー 能勢加奈子さん のせ・かなこ 京都市立芸術大学卒業後、ハイセンス(現フェリシモ)入社。2013年から輸入チョコレート事業のマネージャーを務め、23年から現職。 |