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浜松市楽器博物館

どこか似ている 奏でる音色は?

「アルパ」 パラグアイ 全高153センチ 37弦

 楽器の中には、人々とともに「旅」をし、土地土地の風土や文化に影響されて形を変えてきたものがあります。世界各地の楽器を収集・展示する当館では、開館30周年記念の企画展「海をわたった楽器たち多彩な文化の地ラテンアメリカの旅」を5月13日まで開催中。海を越えて中南米に伝わった楽器に着目し、多彩なラテン音楽文化が生まれた秘密に迫ります。

 弦楽器「アルパ」はスペイン語でハープの意味。15世紀に始まった大航海時代にヨーロッパから持ち込まれたハープに由来します。クラシック音楽に使われるハープは指の腹で優美な音色を出しますが、現地の音楽を演奏するアルパは爪ではじいて奏でます。明るく軽快な音色が特徴で、中南米の音楽とマッチします。
 パラグアイでは特にアルパの演奏が盛んで、伝統音楽「パラグアイ・ポルカ」をはじめ様々な音楽に登場し、国民に広く愛されています。
 打楽器「マリンバ」の伝来には諸説ありますが、奴隷貿易でアフリカから中南米に連れてこられた人々が、故郷の楽器をまねたとも考えられています。次第に大型化し、1台を複数人で演奏するスタイルに。グアテマラではポピュラーな楽器として定着し、この展示品の中央部には国鳥ケツァールの彫刻が施されています。グアテマラはアフリカからの人々が少なかったとされますが、なぜかマリンバが発展しました。その謎に興味をそそられます。
 マリンバの「旅」はさらに続きます。中南米からアメリカに持ち込まれると、吹奏楽やオーケストラでよく知られる形になって、日本にも紹介されました。
 常設展示では世界の楽器約1500点を地域やテーマ別に紹介していますが、遠く離れた土地にそっくりな形をした楽器を見つけることができます。どこが似ているのか、どうして似ているか、考えを巡らせるのも楽しいですよ。

(聞き手・木谷恵吏)

 


 

 《浜松市楽器博物館》 浜松市中央区中央3の9の1(☎053・451・1128)。午前9時半~午後5時。800円。原則第2・4(水)休み。

浜松市楽器博物館:https://www.gakkihaku.jp/

 

やぎ・ゆづきさん

学芸員 八樹優月さん

 やぎ・ゆづき 静岡県出身。2021年から現職。企画展「海をわたった楽器たち」などを担当。地域の祭りで篠笛(しのぶえ)を演奏する。

(2025年2月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)