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世界の貯金箱博物館

懐に賄賂? 映す世相とお国柄

「タマニーバンク」 19世紀、アメリカ 鉄

 世界62の国・地域の2万5千点を所蔵する当館は、貯金箱のワンダーランド。運営する尼崎信用金庫の職員が個人で集めた約600点をもとに1984年に開館しました。

 各国の貯金箱を見渡すとその国らしさが見てとれます。アメリカは国民性か、楽しみながらためられる仕掛けが多いですね。19世紀に玩具メーカーが、メカニカルトイバンクと呼ばれるからくり貯金箱を作っています。ずっしりと重たい鉄製で、南北戦争後に需要が減った鉄が活用されました。設計図もある精巧な作りで300種以上あり、大人たちが収集したようです。
 その一つ、「タマニーバンク」はひげの男の右手にコインをのせると、懐に入れてゆっくりとうなずきます。実在した政治組織による票の買収を風刺したもので、賄賂を受け取る姿を揶揄(やゆ)しています。
 これら欧米の貯金箱は、割らないと中身が取り出せない日本のものと違い、鍵付きのものが多いのが特徴。教会などに置かれた献金箱がルーツで、当館でも古代ギリシャ(紀元前3世紀)の粘土製献金箱の複製を展示しています。ちなみに日本の貯金箱のルーツは縄文時代末期の「甕(かめ)」なのだとか。
 貯金箱といえば豚。多産で繁栄をイメージさせることなどから、世界でも古くから豚の貯金箱が作られました。しかし日本では招き猫もおなじみでしょう。
 「ドルキャット」は、外国人向けの土産品として作られ、青い目をしています。挙げた左手は通常と手のひらの向きが逆。「カモン」と呼ぶしぐさに変えられています。外国では日本の手招きが追い払うように見えてしまうためとか。猫が抱えるのは小判ではなくドルの金貨です。普通の招き猫貯金箱も、物価と連動して小判が千万両、億万両と変わるのが面白いところです。
 時代や形は違えど、貯金箱には物語や人々の夢が詰まっています。キャッシュレスの時代ですが、誰もがどこかで出合っているはず。当館では懐かしい貯金箱に再会できます。

(聞き手・中村さやか)


  《世界の貯金箱博物館》 兵庫県尼崎市西本町北通3の93(☎06・6413・1163)。[前]10時~[後]4時。無料。[月][祝][休]([土][日]と重なる場合は開館)、12月29日~1月5日休み。

 

みとおり・つとむさん

  館長 見通 勉さん

  みとおり・つとむ 1984年、尼崎信用金庫に入庫。定年後の2020年、館長に就任。テーマ展の企画などを担当。

世界の貯金箱博物館

https://www.amashin.co.jp/sekai/index.html

(2026年4月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。入館料、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)