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山王美術館

「裸婦」 1918年 92.8×73.2センチ 油彩、キャンバス

 画面いっぱいに描かれた裸婦。後ろ向きでポーズをとるその背中は、なんともつややか。内側から発光するように輝く肌に、何度見てもため息が出ます。

 息づかいが聞こえそうなこの「裸婦」は、ピエールオーギュスト・ルノワール(1841~1919)が亡くなる1年前に描かれました。

 1897年の骨折で関節リウマチを発症したルノワールは1903年以降、療養のために移住した南仏で絵を描き続けました。10年からは車いす生活を送り、人の手を借りなければ、歩くことも、筆に絵の具をつけることもままならない状態。追い打ちをかけるように、15年には最愛の妻が世を去ってしまいます。

 それでもルノワールは、筆をとる時は上機嫌で、幸せそうだったといいます。その活力になったのが、15年ごろから絵のモデルを務めた、愛称「デデ」。出会った頃の彼女は15歳で、「光を吸い込むような肌」に魅了されました。

 「裸婦」では、絵の具を何層にも重ねる「グレーズ技法」を使って色彩に深みと奥行きを出し、デデの肌のみずみずしさや透明感を表現しています。肌の質感を生涯にわたって追求した姿もうかがえる作品です。

 「裸婦と花の習作」は、L字に咲き乱れるバラと調和するような裸婦の肌色が印象的。「赤」を使って血色感を出し、生き生きとした女性を描きたかったのかもしれません。色彩豊かな花を描くことで、さまざまな肌の表現を試みたという研究の一端を垣間見ることができます。

 ルノワールは複数の画題を1枚に描いた作品も多く残しました。しかしその多くは彼の死後、遺族了承のもと切り分けられて売られたため、元の形で見られるのは貴重です。

 開催中の「生誕185年 ルノワール展」では、作風の変化をたどりながら、初公開12点を含む収蔵品51点をすべて展示します。「描く喜び」があふれたルノワール作品を楽しんでください。

(増田裕子)

 

《山王美術館》 大阪市中央区城見2の2の27(☎06・6942・1117)。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。1300円。火曜、水曜休み(祝日、休日は開館)。今収蔵品展は7月31日(金)まで。

 

かめい・りか
学芸員 亀井里香さん
 
 かめい・りか 兵庫県出身、京都芸術大学通信教育部芸術学部芸術教養学科卒業。2009年から現職。
(2026年4月28日、朝日新聞夕刊欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。)