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国立映画アーカイブ

自由・異彩 魅惑のポスター芸術

粟津潔 「心中天網島」 シルクスクリーン版ポスター 1969年

 映画のポスターには、時にアートとしての魅力もあります。「再訪 日本の映画ポスター芸術」と題した企画展を現在、開いています。当館は日本で唯一の国立映画専門機関。関連資料として所蔵するポスターは約6万4千点にのぼります。この豊富な資料の中から、えりすぐりの品が7階の展示室で見られます。

 映画のポスターというと、フランスや旧ソ連、旧チェコスロバキアなど海外で芸術的なものもあったのですが、日本ではPRに重点が置かれ、多くは製作・配給会社の主導で匿名的に作られてきました。

 1960年代に入り、映画界に変革の時代が訪れ、大島渚、吉田喜重、篠田正浩らの新世代が台頭してきます。ポスター制作でも自由な風が吹いてきます。粟津潔や横尾忠則、和田誠、石岡瑛子といった気鋭の表現者が手がけ、異彩を放ちました。アート系映画で知られる日本アート・シアター・ギルド(ATG)の発足と相まって、スクリーンの外側にもポスターの花が咲くようになるのです。

 篠田監督による「心中天網島」では、戦後日本を代表するグラフィックデザイナーの粟津がポスターを制作しました。斬新な構図です。正方形を上下左右に配置して時間芸術としての映画の魅力を表現しているように感じます。1969年のこの作品には、脚色に富岡多恵子と武満徹が参加するなどジャンルを横断した人材が集まりました。

  私は2012年、当館で主催した「日本の映画ポスター芸術」展で企画を手がけました。あまたのポスターの中に、何とも言えない秀作を見つけたときは心が震え、ポスターの魅力に感じ入りました。それ以降、粟津や横尾、和田の関係者からポスターのご寄贈が相次ぎました。今回は主に1960年代から80年代の90点以上を出品しています。情感をまとった一点もあれば、目を見張るような意外性のある作品もあります。スクリーンとはひと味違った映画の魅力を感じていただければ、と願っています。

(聞き手・木元健二)


 《国立映画アーカイブ》 東京都中央区京橋3の7の6。7階展示室は午前11時~午後6時半(6月26日は8時まで。入室は30分前まで)。250円。月と5月12~17日、26~31日休み。今企画展は7月26日まで。ハローダイヤル(050・5541・8600)。

  

おかだ・ひでのり

 主任研究員 岡田秀則 

 おかだ・ひでのり 1968年、愛知県豊田市生まれ。96年から現・国立映画アーカイブに勤務。「アニメーションの先駆者 大藤信郎」「和田誠 映画の仕事」などの展覧会を担当。

(2026年5月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。入館料、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)