画家たちは「いきもの」をどのように描いてきたのでしょうか。細部まで丹念に描きこんだり、大胆に特徴を捉えて表現したり。テーマ展「絵のなかのいきものたち」では、画家が生き物を見つめる多彩なまなざしを紹介しています。
愛らしい動物を数多く描いた、京都画壇を代表する入江酉一郎(ゆういちろう)(1921~2013)の「珊瑚(さんご)の海」は、亡くなる4年前の作品です。淡い青みがかったグレーを背景に、ピンク色の珊瑚を取り囲むように5匹の海亀を描いています。甲羅の模様や推進力を得るための大きな前肢などの特徴を捉えつつ、ゆったり泳ぐ様子を清明な色調でまとめています。
若い頃は背景も造形も硬質で、力強い色で描いていました。50歳の頃から背景に淡い色を使って、筆触も柔らかくなり、92歳で亡くなるまでフォルムや色彩に特徴のある独自の画風を追求しました。
父は日本画家であり模写の第一人者の入江波光。戦後、父が携わる法隆寺金堂壁画の模写事業に参加しました。30代後半に山口華楊(かよう)に師事して絵に取り組み、「その技術には年輪を経て、熟達している」と、礎に模写で培った卓越した技があると評されました。
一方、近現代日本画を代表する小野竹喬(1889~1979)は、生き物を「自然の中の点景」として描いています。渡欧後、日本画の技法を見つめ直し、墨の繊細な線と薄い色調を組み合わせた淡彩画を次々と発表します。「八瀬村頭」は、その代表的な作品ですが、牛が風景に溶け込むように描かれています。
多数のスケッチ帳に残されていた生き物の素描は、鳥の羽の重なりから昆虫の足の節々まで、実に精密です。日常の中で徹底的に観察していたことがうかがえます。観察眼と技量があったからこそ、四季の中に宿る「生命」を見事に表現できたのでしょう。
日本画家がどのように生き物に心を寄せて表現したのか。「生命の美しさ」をぜひ楽しんでください。
(聞き手・阿部毅)
《笠岡市立竹喬美術館》 岡山県笠岡市六番町1の17(☎0865・63・3967)。午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。テーマ展前期は8月16日まで、後期は9月5日~10月4日。月(祝の場合は翌平日)など休み。600円。
学芸員 金尾ちはる かなお・ちはる 沖縄県出身、吉備国際大学大学院修了。2020年から同館勤務。専門は近現代日本画。 |