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愛媛県美術館

郷土の姿を 精密に ポップに

真鍋博「真鍋博の鳥の眼 松山」 1968年 33・9×45・2センチ

 細部までびっしりと描かれた鳥瞰図「真鍋博の鳥の眼 松山」。星新一やアガサ・クリスティの装画でも知られるイラストレーター・真鍋博(1932~2000)が、1968年当時の松山市内の風景を描きました。建物などの名称も記されています。

 本作は、67年から翌年にかけて週刊誌「サンデー毎日」で連載した「真鍋博の鳥の眼」の一作品です。このシリーズは日本各地の姿を、地域の説明付きで鳥瞰図にしたもの。愛媛出身の真鍋にとって、松山は特に思い入れをもって描いた都市の一つかもしれません。

 絵の中央左側には、96年に解体された愛媛県民館が見えますね。その跡地に当館は立っています。さらに左側には、正岡子規の出身校で、今も残る番町小学校があります。昔の松山の姿を感じ、今ある場所にも思いをはせられる作品です。

 真鍋は航空写真を参考にするだけでなく、自身もヘリコプターに乗り、上空から実際の風景を見て描くことも多かったそうです。都市を描くアングルや文字を入れる位置など、真鍋の「この場所をどう描いたら面白いか」という編集者のような視点も感じられる。その工夫の結晶こそが、写真ではなく彼のイラストで日本を描く意義だったのではないでしょうか。

 25年後の93年に真鍋が描いた「愛媛・空と波と風」(掲載時「空の輝き、波のきらめき、風のささやき」)は、愛媛新聞に掲載された産業経済シンポジウムの記事の挿画です。未来の愛媛がテーマの記事なので、21世紀をイメージして描いたのだと思います。

 多くの色を使いながらもまとまりがあり、活気に満ちた明るい様子が感じられます。松山城などの名所と、近代的な建物などの未来的な要素が共存していますね。

 当館は、真鍋の作品を資料群含め約2万2千点所蔵しています。2点は同じ愛媛を描きながらも、ブレのない硬質な線画と、色彩豊かな未来画という別の真鍋らしさが感じられる。作品を見ながら未来に思いをはせてもらえたら、真鍋も喜ぶと思います。

(聞き手・斉藤梨佳)


 《愛媛県美術館》 松山市堀之内(☎089・932・0010)。【前】9時40分~【後】6時(入館は30分前まで)。340円。原則【月】(【祝】【休】の場合は翌平日)と12月29日~1月3日休み。第1【月】は開館し翌【火】休み。2作品を展示するコレクション展は10月9日まで。

愛媛県美術館 https://www.ehime-art.jp/

 

 

学芸員 宇野茉莉花さん

学芸員 宇野茉莉花さん

 うの・まりか 1997年、福岡県生まれ。大阪大学大学院文学研究科(現人文学研究科)博士前期課程修了。2023年から現職。

(2026年9月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。入館料、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)