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横須賀美術館

人は「かたち」に 新たな具象

島田章三「ミナトヨコスカ」2007年 162.0×194.0センチ

 幾何学的な空間の中に、画面の一要素として存在する「人」の形。横須賀生まれの洋画家で、当館の初代館長、島田章三(1933~2016)を象徴する「かたちびと」の表現です。

 1968年から約1年間、フランスなどに滞在した島田は、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックらの作品に影響を受け、キュビスムを日本人の言葉(造形)に翻訳しようと考えました。特定の人物を描くのではなく、空間の中の人の「かたち」に重点を置いた表現で、具象絵画の新たな可能性を切り開いたのです。

 「ミナトヨコスカ」は当館が開館した2007年に描かれ、国画会の国展に出品された作品です。島田にとっての横須賀のイメージに、海と大型の船、倉庫、クレーンが強くあったのではないかと思います。青と白の色みが明るい印象を与える作品です。

 館長退任後の15年に描かれた「らせんかいだんとうみ」は、作品を見た当館のスタッフの間で「これ美術館だよね」という話になりました。館内にはらせん階段があり、作品と同じ場所から海は見えませんが、階段を上がった屋上からは海が見える。船も見えます。見えるものと実際には見えないものをうまく組み合わせた、島田ならではの表現だと思います。

 館長時代の島田は、非常勤だったので、月に1回、住まいの愛知県から美術館に通っていました。来客も多く、自分の絵が描けるような状況ではなかったので、どのタイミングで描いたのか不思議ですね。

 館長職と自身の活動を、島田は明確に切り離していました。退任後に当館で巡回展が開かれましたが、在任中に自身の個展を開くことはありませんでした。

 再オープンを記念した「没後10年 横須賀美術館コレクションによる島田章三展」では、収蔵品約130点を時代順に作風の変化を追いながら紹介しています。コレクションの全点展示は初めての試み。没後10年を機に、島田作品に触れて頂ければと思います。

(聞き手・鈴木芳美)


 《横須賀美術館》 神奈川県横須賀市鴨居4の1(☎046・822・4000)。午前10時~午後6時。「島田章三展」は11月3日まで。1200円。10月5日、11月2日休み。

横須賀美術館 https://www.yokosuka-moa.jp/

 

 

ひのはら きよみ

主任学芸員 日野原清水さん

 ひのはら・きよみ 奈良県出身。慶応義塾大学大学院修了。2003年美術館開設準備室、07年美術館学芸員。11年の島田章三展も担当。

(2026年9月15日、朝日新夕刊掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。入館料、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)