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最澄ゆかりの比叡山延暦寺とその周辺をめぐる(2)

 ◆伝教大師最澄1200年魅力交流委員会発足

魅力交流委員会記者会見

 2021年6月の最澄遷化(入滅)1200年に向け、19年5月24日、日本文化の伝承と未来をになう人づくりを目的とする「伝教大師最澄1200年魅力交流委員会」が発足。委員会は、比叡山延暦寺にゆかりのある滋賀・京都の自治体や企業、経済界、文化人ら18人でつくられ、委員長にサントリーホールディングスの鳥井信吾副会長、副委員長に京阪ホールディングスの加藤好文社長(当時)、滋賀県の三日月大造知事が就任。同年6月、延暦寺・大書院で記者会見が開かれ、人から人へと育まれてきた日本の文化、伝統、歴史の魅力を最澄の教えとともに伝える「魅力交流」の取り組みについて、各委員がそれぞれの意見を述べた。

 会見には鳥井委員長、加藤副委員長のほか、武者小路千家15代家元の千宗屋委員、天台宗宗務総長の杜多(とだ)道雄幹事、比叡山延暦寺代表役員執行の小堀光實幹事、龍谷大の道元徹心教授の委員、メンバーの立命館大・龍谷大の学生ら計16人が出席。最澄が一乗止観院の宝前に「明らけく 後の仏の御世までも 光りつたへよ 法(のり)のともしび」と願ってともした「不滅の法灯」が、設立趣意の象徴として会場に運び込まれた。

不滅の法灯

 杜多幹事は冒頭のあいさつで「仏教離れや寺離れといった問題が表出しておりますが、決して日本人が宗教や信仰に対して関心を失ったわけではありません。この機に、宗祖大師最澄の『忘己利他』の精神をしっかりと根付かせ、宗門の力だけではなく、多くの人々の英知に力添えしていただきながら、思いやりある共生社会を構築しなければならない」と話した。また、鳥井委員長は「魅力交流では、伝教大師の魅力について『巡る』『学ぶ』『伝える』『海外交流』をキーワードに大学コラボプロジェクトが実施されます。日本文化の伝承という大変難しい課題ですが、学生のみなさんや先生、私たち委員会メンバーが結束して、これから一つのカタチとして提示していきたい」と次世代の担い手への期待と取り組みへの意欲をみせた。不滅の法灯は、2020年4月から1年2カ月をかけて全国の天台宗寺院を特別ご朱印とともに行脚する予定。

 

 ◆日本最長のケーブルカーで門前町・坂本へ

坂本ケーブル

 延暦寺を後にし、山頂と東山麓の坂本を結ぶ比叡山鉄道坂本ケーブルに乗った。1927(昭和2)年に開業した、全長2025メートルの日本一長いケーブルカーだ。眼下に広がる大津の町並みと琵琶湖の雄大な景色に目を奪われながら、11分でふもとへと到着した。

 坂本は、比叡山の表玄関。延暦寺表参道は「本坂」と呼ばれており、頂上や終わりを「末」と言うのに対し、山の麓や事の始まりを「本」と言うことから「坂本」の名が付く。山手の「上坂本」は延暦寺と三王総本宮・日吉大社の門前町として、琵琶湖湖畔の「下阪本」は延暦寺をはじめ京都に向かう荷揚げ港として栄えてきた。

穴太衆積み

 日吉大社の参道には、延暦寺で修行した僧侶の隠居所「里坊(さとぼう)」が立ち並ぶ。野面積(のづらづみ)と呼ばれる自然石を巧みに積み上げた「穴太衆(あのうしゅう)積み」の石垣=写真=、比叡山を水源とする大宮川や権現川の水が流れる庭園など、延暦寺との密接なつながりから形作られた歴史的風致が維持されており、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

生源寺

 また、京阪坂本比叡山口駅のほど近くには最澄生誕地といわれる「生源寺」があり、特別な霊地としてもあがめられる。まずは、延暦寺との「ご縁」の源を探りに行く。

 

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